セルロースナノファイバーとは
セルロースナノファイバー(CNF)とは、幅数10μmのセルロース繊維を1,000分の1~10,000分の1程度までほぐし、ナノメートルサイズの非常に細くて長い繊維としたものです。CNFは高強度、高弾性率、高透明性、大比表面積、低線熱膨張係数(熱に対する寸法安定性)といった特徴を持つことから、樹脂フィラー、電子デバイス材料、ガスバリア材、フィルターなどといった用途への展開が期待されています。
第一工業製薬のCNF「レオクリスタ®」
第一工業製薬では、TEMPO酸化法により製造されるCNFを製品名「レオクリスタ」として販売しています。TEMPO酸化法とは東京大学磯貝明教授らのグループにより見いだされた手法で、セルロース繊維に高密度にカルボキシ基を導入し、高効率でCNFを調製する技術です。本技術により得られるCNFは繊維幅が約3 nmと非常に細く、しかも均一であることが特徴です。

TEMPO酸化CNFの外観

透過型電子顕微鏡画像
レオクリスタの特徴
1. ネットワーク構造の形成
水中においてCNF同士がネットワーク構造を形成し、それにより高い増粘効果や、油の分離防止、微粒子などの沈降防止効果が得られます。

レオクリスタの高い増粘性(左)と金箔の沈降防止効果(右)
2. ネットワーク構造のせん断による
破壊と再構築
力を加えることでCNFのネットワーク構造は破壊されますが、力を加えるのをやめるとネットワーク構造が再び形成されます。この機能を利用することで、「スプレー可能でタレないゲル」というようなユニークな剤型を作り出せます。

スプレー可能でタレないゲル
3. 皮膜形成能
レオクリスタから水を除去すると、セルロース繊維同士が強固に絡み合った皮膜となります。この皮膜は高透明性、高強度で、しかも通常の紙と同じように折り曲げることができます。また、微粒子などを混合して皮膜とすることで、バインダー効果や微粒子の凝集抑制効果が得られます。

レオクリスタの透明乾燥皮膜
レオクリスタの品番と特徴
品番 | 特徴 | CNF固形分(%) |
---|---|---|
レオクリスタ I-2SX | 標準グレード | 2 |
レオクリスタ C-2SP | 化粧品グレード | 2 |
レオクリスタ I-2AX | 極性溶剤配合安定性向上グレード | 2 |
レオクリスタ I-2SXS* | 短繊維長グレード | 2 |
*開発品
より使いやすいCNFを目指して
第一工業製薬では前述のようなCNFの特徴を生かした開発を進めており、「お客様のニーズにあわせた製品の改良」や「用途に応じた応用データの蓄積」など、添加剤メーカーである第一工業製薬らしい開発を心がけています。
今後もお客様の声を大切にし、お客様ごとのニーズにあわせた「より使いやすいCNF」の創製を目指していきます。